ある意味ブラックリスト? ふるさと納税の返礼率(≒還元率)上位の自治体はこちら
ふるさと納税の寄付金獲得競争が過熱しているとニュースになっていたので調べてみました。
ごぞんじの方も多いように、ふるさと納税とは、個人が自治体に寄付すると、その金額の一部が所得税と住民税から控除される仕組みです。
具体的には、寄付した額の2000円を超える部分について、一定限度額まで、原則として全額が控除されます。
つまり1万円の寄付をすると8000円が、3万円の寄付だと2万8000円が控除されます。
最近では、できるだけたくさんの寄付金を集めたい自治体どうしの競争が激しくなり、高額な返礼品や、自治体の特産品でもないテレビなどの家電製品、換金性の高いプリペイドカードを返礼品にするなど、自治体による「お得感」アピールも激しくなっているのだそうです。
こうしたなかで、控除額+返礼品の価値が寄付金と比べてリーズナブルだと感じる人も当然多くなり、ふるさと納税をする人がここ数年で急増しています。
ちなみに、平成30年度の控除適用者数は約296万人(ふるさと納税ワンストップ特例制度を含む)で、5年前の平成25年度の10.6万人と比べてじつに約28倍と、ここ数年で大幅な伸びを見せています。
ところが…、
NHKニュース
ふるさと納税「3割以下」守らぬ自治体は対象外 制度見直しへ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180905/k10011609261000.html
2018年9月5日ふるさと納税の返礼品をめぐって自治体間の競争が過熱しているとして、総務省は、返礼品の調達価格を寄付額の3割以下にするなどの通知を守らない自治体については、ふるさと納税の対象から外し、寄付しても税金が控除されないよう、制度を見直す方針を固めました。
総務省では、多くの寄付金を集めるため高額な返礼品を贈るなど、自治体間の競争が過熱しているとして、自治体に、返礼品の調達価格を寄付額の3割以下にすることや、地元の特産品を使うよう通知しています。
しかし一部の自治体は、通知を守る考えはないとの立場を表明し、多額の寄付金を集めています。
総務省は、こうした状況はふるさと納税制度の趣旨から看過できないとして、通知を守らない自治体については、ふるさと納税の対象から外し、寄付をしても税金が控除されないよう、制度を見直す方針を固めました。
こうした制度の見直しには地方税法の改正が必要となることから、総務省は、与党の税制調査会での検討を求め、了承が得られれば、来年の通常国会に必要な法案を提出したい考えです。
NHKのニュースによると、現状の過熱した競争に、来年以降はブレーキがかかる方向性も見えてきました。
この「寄付金の3割以上の返礼品を贈っている」自治体とは一体どこ?
では、総務省が問題にしている自治体とは、具体的にどの市町村のことなのでしょうか。
それはずばり、こちらの市町村になります。
これらが、特産品と関係なかったり総務省が設定している基準より高い返礼率の商品をふるさと納税のお礼として送付している自治体で、なおかつ受入額が大きい、つまり別の見方をすれば、ふるさと納税の寄付先として人気が高い自治体ということになります。
- 茨城県 境町
- 岐阜県 関市
- 静岡県 小山町
- 滋賀県 近江八幡市
- 大阪府 泉佐野市
- 福岡県 宗像市 上毛町
- 佐賀県 唐津市 嬉野市 元山町 みやき町
- 大分県 佐伯市
この中でダントツで受入額の大きい大阪府泉佐野市の返礼品を見る(楽天市場で検索できます)と、「季節の泉州野菜セット」や特産のタオル、高級黒毛和牛などのほか、意外にも「エビスビール」や「氷結」などの地元とは関係なさそうな、ごく一般的なビールやお酒、お茶、野菜ジュースや箱ティッシュに至るまで、まるでネットスーパーのような多種多様な品揃えです。
これはどういうことでしょうか?
つまり普段から購入している日用品・実用品をここで購入(名目上は寄付の返礼ですが)すれば、税の控除も受けられてお得、家計を節約できる、ということなのでしょうか。
思いのほか、かなり日常生活に密着したマインドでふるさと納税が利用されていることが推測できます。
利用者が急増している背景には、普段のインターネット通販を通じて出費を節約できることが広まってきた、このような事情もあるのかもしれません。
過去には返礼率8割越えの自治体も
総務省の「ふるさと納税に関する現況調査結果(都道府県・市区町村別)集計結果」(平成29年度)に基づいて計算すると、年度に自治体が受け入れた寄付金の総額のうち、返礼品の調達にかかる費用が最も多かったのは千葉県勝浦市で296%、決算のタイミングもあったのか(?)、大幅な赤字ですね。
その次に多かったのが、同じく千葉県の大多喜町で85%でした。
これらの自治体は「感謝券」という地域内で使用できる商品券を返礼品としていたのですが、換金性が高く、ネットオークションで転売の商材にもなっているということで、最近になって相次いで廃止されました。
平成29年度にはそのほかにも、返礼率7割越えの自治体が長野県栄村など5自治体、6割越えの自治体が新潟県三条市など16自治体ありました。
寄付する側にとっては、こうした返礼率(還元率)のたかい、「おいしい自治体」を探すことで、ふるさと納税をある意味で「お得」に利用することができるのです。
上記の市町村の「お得な」返礼品とは?
さいごに、上記の(返礼率が高く、総務省の通知にしたがう気がない)自治体の返礼品のうち、特に返礼率の高そうな高級品や、目立った特徴のあるものをいくつかピックアップしてみましょう。
各地ともたくさんの返礼品がありますが、リンク先では楽天市場の一覧を見ることができます。
泉佐野市は上で出たので、それ以外を。
岐阜県 関市 …爪切り、包丁、はさみなど関孫六の刃物や名産の食品。
静岡県 小山町 …ゴルフコースのプレー券セット、果物。
滋賀県 近江八幡市 …高級近江牛セット、西川の布団や枕。
福岡県 宗像市 …もつ鍋セット、明太子セット。
佐賀県 唐津市 …カレー、佐賀牛。
佐賀県 嬉野市 …純米大吟醸のセット。
佐賀県 みやき町 …お米各種、オホーツクの毛ガニ、佐賀牛、美容・コスメ系商品、ヘリコプターで東京遊覧など。
大分県 佐伯市 …豊後牛、真珠など。
こうしてみると、どこも基本的には、地元に密着した特産品を返礼品にしています。
でも九州佐賀県の自治体の毛ガニや東京ヘリ遊覧など、総務省的にはNGと思われる返礼品もちらほらありますね。九州にアグレッシブな自治体が多いのはなぜだろう。
総務省の立場からすると、一応は地元の特産品でも、価格に対してものが良すぎるのも過当競争につながるので、抑えなさいということもあるのかもしれません。所得の中から寄付する側としては、高級食材・商品・サービスを妥当な価格で買って、さらに税の控除を受けられるので、悪いことではないのですが…。
一方で、ふるさと納税の制度そのものが、高級品を買えたり寄付にお金を使えたりする高所得者への優遇税制として逆進税的に機能している(庶民はそもそもふるさと納税にお金を回せるだけの余裕がない…)ことへの批判も存在することは、心に留めておきたいですね。
ふるさと納税の金額シミュレーション
別のページにふるさと納税の控除金額を大まかに計算できるシミュレーターがあったので、こちらもおまけとして紹介。
※記事中のグラフと表は、総務省のpdfより引用しました。